【番外編】肉対談 稲見先生 × 奥出先生

02 12月 2015,   By ,   0 Comments
六本木ヒルズの裏、けやき坂にある37 Steakhouse & Barにお邪魔しました

六本木ヒルズの裏、けやき坂にある37 Steakhouse & Barにお邪魔しました

 

 

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料理選びは真剣です

稲見先生:この店は学生には少しもったいないですね。
奥出先生:今日はもったいない日ですから。なので、これはKMD FACTORYの成功に向けて投資です。

-料理選び-
:今日はもうどの肉を食べるかは決めてまして、ポーターハウスステーキ骨付き1kgを二ついきましょう。
:いいですね、やっぱりお肉は塊で食べたい。
:そうしましょう。ポーターハウス二つとサイドディッシュと赤ワインというシンプルなスタイルでいきましょう。
:サイドディッシュはスピナッチがいいですね。
:決まったところで、乾杯ということで

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:稲見先生は本当に美味しいものを知っていて、美味しいもののあじわい方がすごく良いんですよね。本当によく味わう。自分で料理する人はそうなんですが。
:以前に比べて頻度は減ってきていますが、料理はよくしていましたね。何故かと言うともともと化学部なので、実験的な操作が大好きなんです。その代わり男の料理みたくなっちゃうんですが。
:稲見先生は美味しい料理を食べている時は化学式で分析していると伺いましたが。
:生物系で食品科学の授業とかを受けていて、食べ物に関して記述するための言語は教えていただいていたので。基本的に物の美味しさは化学反応によるものですから、例えばメイラード反応といった、糖とタンパク質の反応という一見食べ物から離れたところにあるものが味に関わってくる、といった事が自分の中でつながった時に初めて『わかった』気がしました。精密に現象を記述するということと実世界をどうつなげるか、『わかる』ということはそういうことなのかなと。

 

:僕もそうなんですが、稲見先生の美味しい物を自腹で探して食べる感ってのは半端ではないですよね。
:美味しい店を探すことは研究と共通のところが多くあると思っていまして、普通の人が見過ごしてしまう所とかを自分で見立てるところが大事といいますか。
:研究に近いといえば、僕もまだ三回くらいしか行ったことが無いのですが、日本料理のとても素敵なお店がありまして、料理人の方はまだ30代くらいの方なんですが非常に腕が良いんですよ。
:本当はそのくらいの、30代から40代くらいの歳の方が一番腕がいいんですよね。
:そう。やっぱりピークが研究者や外科医と一緒なんですよね。
:評価は高くなるんですけど、実は腕自体はもうピークを過ぎている。研究でも同様のことが言えるのかもしれませんが。
:料理って実はすごく力仕事で体力等がすごく関係してくるので、ピークをこえると有名な料理人の人でもダメになってしまう。自分が30代の半ば過ぎあたりからお金に余裕が出てきて美味しいものを食べに行っていると、料理人の方がだんだんと力を失ってくる。そうなると店を変えなければならなくなる。これを繰り返している内に、料理人が自分の弟子と同い年になっていたりするんです。

ただ、この間とある店に行ったんですが、そこの料理人の方は結構お年を召してらっしゃるので、もう味が落ちてしまっているかなと思っていたのですが意外と味が保たれておりまして、何故かと思って見ているとどうやら人を育てるのが上手なんです。どんどん育てては優秀は人に暖簾分けをして系列に収めていっているんです。これは僕のモデルでもあるのですが、弟子を育てて生き延びていく、という。料理人、研究者、外科医、これらは非常に似ている。
:料理人は研究者そのものですよね、日々研究をしている。
:料理人と外科医も非常に似ていますね、ほとんど一緒と言っても良い。相手の力量をみる点や、自分よりも腕のいい人に仁義を切る点などは殆ど板前さんと同じ。
:理系の研究者をしているとたまにつば迫り合いのような、自分の力量を測られる事がままあります。とある大手の会社で、役員までがずらりと並ぶ会議に呼んでいただいた時に、その会社の中央研究所といったところの人たちが私のような大学の研究者に対して「この点についてはどうお考えですか?」といった質問を投げかけてくる。その質問にちゃんと返すと逆に親しくなり仲間になるんです。
:面白いですね、僕は文系なのであまりそういった事は少ないですね。文系の研究者は基本的にお呼ばれする形で講演などにいきお話をさせて頂くんです。文系はたたずまい、理系は技ずまい、といったところでしょうか。しかし、そういった風にばかり生きていては研究者としてダメになってしまうので、稲見先生の様につば迫り合いで勝てるような研究者でいたいと常々考えております。

-お肉の到着-

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フィレとサーロインがどちらも楽しめるポーターハウスステーキを注文 おすすめのミディアムレアで。

 

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KMDの教授陣はみなさま食いしんぼうです

:おお、すごい
:これがKMD FACTORYのWebにのるのはいいね。やはり量が多いほうがいいですね。
:これは楽しいですね
:なんて美味しいんでしょう
:これは和牛だけの味ではないですよね、初めて食べる味がします。
:この肉は和牛とオーストラリア牛を交配させているんです。この店の日本人のオーナーの方が、当時日本にアメリカ型の熟成肉が無く、ならばとピータールーガー※1やウルフギャング※2のコピーではなく日本なりの店を考えて構えて開店なさったんです。その矜持がいいですよね。
:奥出先生に是非ともご紹介したい店があって、そこの料理人さんは肉の研究者して、周りから変態と呼ばれるほどなのですが、奥出先生と絶対に気が合うと思います。どれくらい変態かというと、和牛に勝つレベルのホルスタインを作ってしまうくらいです。
:では僕も京都で一番美味しいというステーキ屋を紹介します。とても小さい店でなかなか行けないのですが、ここがすごく美味しい。互いに文系の肉屋、理系の肉屋を紹介するといった形で。
:ニューヨークにいった時に名だたる名店を幾つか行ったのですが、とても美味しかった。しかし、そういった店よりもここの店の方が美味しく感じる。美味しいという感覚は現象学的ですから、日本人の我々にとってこの店の方が美味しく感じるということなんでしょうな。
:ちょうど日本の話をしたところでわさびが来ましたね。

※1 ブルックリンにある、ステーキハウスの名店。

※2 マンハッタンにある、ステーキハウスの名店。ピータールーガーで修行していたシェフが独立した店

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わさびの香りが味に奥行きをうみます

:わさびをかけると味に奥行きがでていいですね。
:この、和製ステーキハウスに徹しているところが素晴らしいですね。
:僕の初期の頃の学生で、日本で熟成肉を普及させるのに一役買った者がいまして、彼が赤肉の熟成肉の食べ方を日本に仕掛けたんです。
:やまけんですか?たしかSFCの一年の時に農園を作ったという。
:そうです。
:今では超有名なフードブロガーをやっていますね。

 

-デザート選び-

:そろそろデザート、コーヒー、濃いお酒で〆ましょうか。ダブルエスプレッソとグラッパの組み合わせが好きなんですが。
:エスプレッソとグラッパが合うんですか?私あまりコーヒーを飲まないもので。
:美味しいですよ。

:僕はピーカンナッツのタルト ピスタチオジェラート添えにします。ダブルエスプレッソにグラッパの比較的カンタンな物を入れてください。あと、いいグラッパを別のグラスで持ってきていただければ。
:バニラとピスタチオのアイスクリームとそれに合いそうにデザートワインをください。

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奥出先生ご注文の、ピーカンナッツのタルト ピスタチオジェラート添え

グラッパ ワインをつくった後のぶどうの絞り粕から作られるブランデー

グラッパ
ワインをつくった後のぶどうの絞り粕から作られるブランデー コレを食後にエスプレッソと飲むのが奥出先生流

:学生に色気のあるものを作れというと、たまに「色気とは何ですか」と聞いてくる時があります。
:ドキッとする、ということですよね
:そうです。
:色気だったり、美しさという考え方はエンジニアにも実はあるんです。
:同じですね、こころからグッと来るもの、それが色気のあるものですよね。何かをデザインするときには必ず部分を統合して全体を作る作業が必要になるのですが、それまでバラバラだった部分が統合された時には、ギラギラっと輝く色気が生まれると感じています。
:それって、『わかる』ということですよね
:本物か偽物か。光っているか否かがわかる。ガーーン!といった音でしか表現できないような、そういった魅力や色気を一気に放つわけです。まるで熟成肉みたいに。
:蓮實重彦さんが仰ったことの中に、『理解と納得の違い』というものがあります。世の中には納得がはびこりすぎているが、理解というものをもっと大切にしなくてはならないということを仰っていまして。
:力ずくで説得されるのではなく、『わかる』ということですよね。納得というのは時間をかけて説明されて飲み込む感じですが、理解というのは一瞬の事。
:理解は自分の内側のモデルと適合することですね。
:僕は理解、つまり、comprehensionこそが全てであると感じています。
:今日は美味しいお肉でした。
:本当に美味しかったですね。
:僕は最近不思議な感覚を持っていまして、次の日の朝に目覚めるとまだ美味しいエッセンスが残っていて、かなり冷静に反復ができるんです。
:それはすごくわかります。お腹の奥に残っている感じですよね。
:そうなんです。良い料理のエッセンスが残っていて、次の日に再現する。肉のみならず、日本食の出汁でも言える話ですが。
:では、翌朝のお肉のエッセンスを楽しみにしつつ。

ご機嫌の奥出先生

ご機嫌の奥出先生

 

同じく、ご機嫌の稲見先生

同じく、ご機嫌の稲見先生

食事
ベストオブシーザーサラダ クリーミーパルメザンドレッシング
ポーターハウスステーキ骨付き 1kg ミディアムレア
クリームスピナッチ
ピーカンナッツのタルト ピスタチオジェラート添え
バニラとピスタチオのアイスクリーム

 

ワイン

シャンパーニュ地方 ブルーノパーアール シャルドネ ブラン・ド・ブラン 2004
ゴールデンアイ ピノ・ノワール
スタッグ スリーブ SLV

 

協力

37 Steakhouse & Bar

東京都港区六本木6-15-1 六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り2F

http://www.37steakhouse.com/index.html

LUNCH Weekday 11:00 – 15:30 (L.O. 14:30)
Weekend, Holiday 11:00 – 16:00 (L.O. 15:00)
DINNER All Day 17:30 – 23:30 (L.O. 22:30)

 

文:岸田卓真

写真:家倉マリーステファニー

  1. 笑八达 より:
    あなたのコメントは承認待ちです。

    感受学习的力量!

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