「工場夜景」製作秘話インタビュー

17 9月 2015,   By ,   0 Comments

 

 

11月27日のKMDFactoryまであとすこし!みなさん、いかがお過ごしでしょうか?

今回はFactoryにちなんで、「工場夜景 Factory at night」を製作したKMDのOBであり、現在リサーチャーの須藤充晃さんに、製作秘話やKMDでの暮らしについてインタビューしました!
作品を見てからインタビューを読んでみてください。物作りや表現に興味がある方、必見です!!!

 

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バックグラウンドを教えてください。

ー大学を卒業してから、在学中からアルバイトとして働いていたUI(ユーザーインターフェース)デザインの事務所に5年在籍し、その後KMDへ進学しました。

 

 

どうしてKMDに進学しようと考えたのですか?

ー学生,社会人と培ってきた経験を活かして、何か新しいことに挑戦したいと思ったからです。

 

 

どうしてPower of Motion Pictures(現 :CREATO!)プロジェクトに所属することに決めたのですか?

ープロジェクションマッピングをやりたいと思ってたんです。ラジコンレースへのリアルタイムプロジェクションマッピング。

Power of Motion Picturesは映像作成手法や映像伝送をメインに研究していたので、まさにぴったりな研究室でした。

当時はまだ動体へのマッピングってあんまりなくて、ラジコンレースにリアルタイムに映像をマッピングしつつ、これを遠隔地同士で対戦できるようにしたら、マリオカートみたいなゲームが現実世界でできるんじゃないかと考えてました。

KinectとかLeap Motionとかを使ってデモ版を作ったんですが、あんまりパフォーマンスが良くなくて行き詰まってましたね。

 

 

それで工場夜景にシフトしたんですね。

ーそうですね(笑)もともと工場夜景プロジェクトとラジコンプロジェクトは並行して動かしていたんですが、KMDではスポンサーが付かないと新規プロジェクトとして認めてもらえないので、スポンサーがついた方をメインにしようと考えてました。

『工場夜景』って、今ではもう聞いたことない人がいないくらい有名になってると思いますが、私も趣味で10年くらい前から撮っていました。当時(それよりも前)から、写真を撮っている方はたくさんいたんですが、映像ってあまりみたことがなかったんですよね。工場夜景を映像にすることは難しいとわかっていたので、映像化に挑戦することで新しいプロジェクトを立ち上げられるのではないかと思いました。

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工場夜景を趣味として始めるきっかけは?

ーはじめて工場地帯に行ったのが、大学一年の時に同級生に誘われてでした。それまでも興味はあったんですが、そこからですね。その時行ったのが京浜工業地帯(川崎)で、あの時はまだ車の免許も持ってなかったから、何時間もかけて歩きまわってました。

 

 

工場のどこに惹かれましたか?

ー何がすごいってとにかく雰囲気ですよね。ちょっと伝えるのが難しいんですが… 映像や写真だけでは伝えきれないですね。音とか匂いとか、五感で感じるものだと思います。アミューズメントパークって人を楽しませるために人工的に楽しい雰囲気を作ってると思いますが、工場地帯は産業のためにあるので楽しいとかそういうことを計算して作ってはいないんです。人工的でないのに楽しいって、本当のエンターテイメントじゃないですか?

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制作された映像は早回しにみえますが、理由はなんですか?

ーこれはタイムラプスという撮影手法を使っているため早回しに見えています。定点で連続で写真を撮って、それを映像にしているんです。当然動画の一コマ一コマが写真になるんでものすごく撮影に時間がかかります。

一般的なムービーカメラで夜景を撮ると、真っ暗になってしまうんです。プロ用のシネマカメラでもない限りはこういった夜景を映像にできない。でもタイムラプスを使うと一般的なカメラでも、工場夜景のような暗い撮影対象も美しく撮影することが可能になります。

 

 

工場夜景を撮影する際のこだわりや、作品で「ここを見て欲しい!」といったところはありますか?

ー私が一番こだわっているのは、工場から出る水蒸気の動きです。

工場夜景を映像にするのが難しい理由がもう一つあって、工場って動きのない撮影対象なんですね。動画ってなにか動いていないと成立しないじゃないですか。

そこで私が注目したのは、工場から排出される水蒸気や、空の雲の流れです。これらをより現実感をもって映像にすることが私の研究のテーマでした。実は普通のタイムラプスとは少し違う手法で、流体をリアルにみせています。私はこれを水蒸気を美しく表現する撮影手法として「スチームラプス」と呼んでいます。ぜひ、流体の動きに注目してみてください。

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制作苦労話を教えてください。

ー色々あるんですが、機材を集めることが大変でしたね。工場が動かないのはさっきも話しましたが、じゃあカメラを動かせばいいんじゃない?ってことで、モーションタイムラプスっていうのをやってみたんです。それをやるための機材がものすごく高くて、Kickstarterで(比較的)安く揃えられる機材を個人で輸入したりしました。

2014年4月からは、川崎市総務局秘書部ブランド戦略担当の行っている川崎市イメージアップ事業という制度に選定されて、プロジェクトに対して助成金が出るようになって少し楽になりました。

 

 

どういう経緯で、川崎市イメージアップ事業から援助を受けることができたんですか?

ーこのプロジェクトで一番最初に立てた目標って、川崎市観光協会の公式ページに自分が作った動画を載せることだったんです。で、実際に作って持って行ったら断られてしまいました。理由は綺麗すぎるからって、嬉しいのか悲しいのかわからなかったですね。でもそれにはちゃんと理由があって、工場のありのままの姿を見てもらいたいっていう願いがあったからそういう判断をしたと後で伺いました。

ただその後でイメージアップ事業というのに応募してみたらどうかとアドバイスをいただいて、応募してみたところ採用していただけました。今思い返してみると、あの時に載せてもらっていたら今のような広がりはなかったかもしれません。

 

 

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いつから川崎駅で作品が流れるようになったんですか?

ー2014年の4月にイメージアップ事業に選定されて、9月に川崎駅と溝の口駅のデジタルサイネージで流れるようになりました。 その間にも、テレビ神奈川のLOVEかわさきという番組で放映していただいたり、Fm yokohamaのラジオに出演したりもしました。

 

 

いまYoutubeにあがっている動画は、どれくらいの期間で作成されたものなんですか?

ー丸々一ヶ月くらいですね。12月から1月にかけて、ほぼ毎日撮ってました。クリスマスも大晦日も元旦も。元旦は車の通りが少ないんで、撮影しやすいんですよ(笑)

 

 

冬の工場地帯の寒さはしんどいですよね。

ー本当に寒かったです。ビバンダム※みたいになるまで着込んで撮影に臨みました。現地までは車で行けるとはいえ、撮影中はカメラから離れるわけにいかないですしね。でも空気が澄んでいるので、やっぱり撮影は冬ですね。

※ミシュランのキャラクター

 

 

撮影って、基本一人で行うんですか?

ーこの映像を撮影した時はほとんどひとりでしたね。

 

 

一人で夜中に川崎の工場地帯を撮影するって怖くないですか?

ー全然怖くないです。むしろめっちゃ楽しい。他にも工場を撮影してる人もいますしね。

私が撮影を始めた時より、今の方が撮っている人が増えていて、工場と車やバイクと並べて撮影してる人もいます。そうして、工場の楽しみ方が「文化」や「カルチャー」として広がっている感じがします。

工場夜景って、見た目の美しさも勿論あるけれど「工場の歴史」を知ることによってより深く楽しむことができるんです。こういうのを「産業観光」っていうんですが、川崎市が行ってるツアーではその辺も解説してくれたりして結構勉強になります。

こういう風に、工場を起点とした楽しみ方って色々あるんです。5年後,10年後には今までに考えつかなかったような工場夜景の楽しみ方が生まれていると思います。

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工場夜景にそのような広がりがあるなんて知りませんでした!

ー工場夜景は立派な観光資源なんですよ。今後は工場地帯を有する地域が協力して、この『工場夜景』を観光資源としてより強固なものにしていく必要があると思っています。そのためにはまず工場地帯を有する地域の方が、自分たちの持っている「財産」に気づくことが大切だと思います。

 

 

たしかに、工場地帯が観光資源として成立するということはわかりました。でも、住民にとっては工場はあまり良いイメージはないですよね。公害の象徴のような…

ー確かに近隣にお住まいの方にはあまり良いイメージがないかもしれません。実際に、川崎駅で流している映像に対して「なぜ公害の象徴である『煙』を映像にしているのか」という問い合わせがあったと川崎市の方から連絡をいただきました。

私は、このインタビューで何度も水蒸気と言っていますが、私が撮影している工場から出ている煙は、全て水蒸気なんです。全部白いでしょ?

あとは工場の煙突から出ている炎をフレアスタックっていうんですが、あれも製油所なんかで出る余ったガスを、焼却して無害化するために行ってるんです。

これはさっきの公害の歴史にもつながってくる話なんですが、今は環境に配慮した基準がきちんとありますし、工場自体が公害のシンボルである時代は終わったと考えています。押し付けがましいかもしれませんが、まずは「工場のいま」を知ってもらうことが必要ですね。そうすることで観光資源としての工場夜景を、もっと盛り上げていけると思います。

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今後の目標は?

ー私が今作っている動画って、あくまで導入でしかないと思うんです。どんな切り口でもいいので、まず興味を持ってもらうことが大切だと考えてプロジェクトを進めてきました。

たださっきも言った通り、やはり歴史的な背景や環境のことを知ることで工場を見る視点がかわります。今後はそういったところを映像として表現していきたいです。

1982年に製作された『コヤニスカッツィ』っていうタイムラプス映像の王様みたいな映画があるんですが、文字もナレーションもなく、見事に『平衡を失った世界』を表現しているんです。これを目指したいですね。もっとも私がテーマにしているのはこれの真逆なんですが。

 

 

最後になにかありますか?

ー工場夜景の認知度は高いと言いましたが、本当に現地まで観に行ったことのある人ってまだそんなに多くないと思います。

実は海外でも工場夜景に興味あるって人はいて、むしろ歴史としては日本よりも前に工場を芸術の対象として扱っていたりするんです。そういう意味でも、潜在的に工場夜景を楽しめる人ってまだまだたくさんいると思うんです。

今はインターネットでどこの国の人でもリーチすることができる。映像という媒体を選んだのも、非言語であらゆる国の人に工場を観賞するという文化を理解してもらえると考えたからです。このプロジェクトをきっかけに、少しでも工場夜景の魅力に気づいていただけたら嬉しいですね。

 

須藤さん、お忙しい中ありがとうございました!!

 

 

Factory at night HP

 

ライター:島田誠奈

photo:工場地帯 須藤充晃 / インタビュー中 林岳